夜にカーテンを開けて

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静かな夜。

一人で部屋にいても、隣に誰かが寝ていても、

ふと自分がこの世界に、たった一人なんだと思うことがある。

そんなときは、けだるそうにスマホの画面を付けて、

その眩しさに一瞬だけ目を細めて、明るさを調整してからSNSを見てもいい。

そこには、政治の話から、どこかで見たことがあるような「おもしろ動画」、寝ていないどこかの他人のピンと張った一言、素敵な音楽が溢れている。

雑多、雑多、雑多。

どうせつまらないもの。

でも、そんなものたちで、僕らは一人ではないことを感じられるのかもしれない。

 

それでもどうしようもない時もある。

天井の蛍光灯を付けてみる。

その時の僕には、蛍光灯の光は強すぎる。

カーテンと壁紙と日常の物たちに囲まれたいつもの部屋は、平面で僕を飲み込みそうになる。

空間が迫ってきて、僕は小さくなっていく。

体育座りをするような感覚。

 

暗い部屋のカーテンの隙間から光が漏れている。

今は部屋のほうが暗い。そう、外のほうが明るいのだ。

僕は思い切ってカーテンを開ける。

今日は曇りで、夜空は灰色だ。

建物の形が、はっきりと見える。

少し離れた家の部屋が一つだけ電気を付けている。

人間、光、生活。

悪くないね。

部屋の常夜灯が月みたいに窓に映る。

ついでに自分の姿も少しだけ映る。

余っていたキャンドルもつけてみた。

うん、もう大丈夫。

落ち着いたら眠りにつくことにしよう。少しだけ踊るような、それでも優しい音楽を聞きながら。


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