太陽をなくす

金曜の授業のあと、クラスメートと先生と一緒にスーパーマーケットでワインとプレツェルを買ってきてウィーン10区の新興住宅地の公園にあるベンチで飲んだ。先生は泊まっているホテル(大学のキャンパス移動の件で、毎週ブダペストから通っている)備え付けのグラス2つを持ってきて、僕はずっとバックパックに入れてある折りたたみのコップ、他の人はウォーターボトルに移して乾杯した。綺麗な芝生とユニークな遊具がある公園は真新しいマンションやまだ建設途中の現場に囲まれている。スカーフを被ったおばさんたちや小さな子供連れの家族、犬を散歩している人、ランニングをしている人たちで公園は賑わっていた。ワインをちびちびと飲みながら、大学の授業のこと、自分の研究のこと、途中大音量で聞こえてきたインドのDiwaliについてなど、いろいろと話した。クラスメートの誰もが勉強を大変だと言っていたことで少し安心した。夕暮れからしっかりと日が沈む8時頃まで話していた。

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それからパートナーがブダペストからバスで到着したのでその足でウィーン中央駅まで迎えに行き、地下鉄に乗って部屋で夕食をとる。

土曜日と日曜日は10月末としては「気が狂った」ほど暖かく良い天気だったこともあり、二人で宮殿に行ったり、大聖堂を眺めたり、その近くにあるカフェに行ったり、ドナウ川沿いのベンチで白鳥を眺めたり、部屋で一緒にスシを作ったりして過ごした。

ちょうど日曜日の午前3時に夏時間から冬時間から変わった。僕は1か月定期を持っているけど、パートナーは24時間チケットを買っていたので、25時間使えるから1時間得したね、などと笑った。

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日曜の夕方にはチケットの期限は切れていたのでアパートから中央駅まで一緒に歩いて行った。次に会うのは2週間後、ブダペストでの予定だ。いくらバスで3時間の距離とはいえ、なかなか会えないのは寂しい。彼女を送って、アパートに戻った時には残像が見えるようで、何だか一人ぼっちだなと思った。彼女に持たせたサンドイッチの残りのパンと冷蔵庫にあるチーズ、クリーム、ベーコンと一緒に食べる。買ってあった常温のビールをゆっくり飲むと、何も手につかなくなってしまった。月曜には課題があるというのに。気まぐれにSNSを見たりしながら、これではだめだと思い、11月に親友とアムステルダム旅行(彼とは現地集合)の航空券を予約したりした。日曜の夜は早めに寝て、月曜の朝早く起きて課題を終わらせることにした。

 

月曜の朝起きると、向かいの工事現場では既に作業が始まっていて、少し騒がしかった。いつも起きる8時半ではなく、7時半にアラームをセットして起きた。一時間遅くなったのだから体内時計が調整されていなければ8時半に起きることと変わらないはずなのに、早く起きたときのだるさが全身に染みた。フラットメートにおはようと言ってから、お茶を淹れて作業に取り掛かった。作業は午後の授業の前にはどうにか終わった。

バルコニーに出ると少し霧っぽくて、風が冷たかった。太陽はその姿を見せなかった。きっとこれが普通の10月末のウィーンなんだろう。

冬用のジャケットを来て、トラムに乗りキャンパスに向かう。トラムを待っている間に近くにあるケバブ・ピザ屋でマッシュルームのピザの四分の一を2.5ユーロで買って食べる。マッシュルームが缶詰の物であまり美味しくなかったが、店のおじさんが良い雰囲気だったのでまあいいかと思った。授業では、事前に文献を読めていなかったため、授業の内容を理解するのが難しく、自分に劣等感をかかえながら2コマ連続の授業を乗り切った。

授業が終わる5時頃にはもうすっかり暗くなっていて、僕は太陽をなくしたのだと思った。

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