さあ、スタジオへ行こう
日本に帰ってきて友人と飲んでいるとき、ふと気分が良くなって埃の被ったエレキを手に取る。
軽くチューニングをしてから指が覚えているフレーズを爪弾く。
「何か一曲くらいスタジオ入ってやってみるか」
ベースをやったことのある友人と、いつの間にかそんな話になっていた。
バンドを組む時の高揚感を久しぶりに思い出していた。
ギターは中学生のときから始めて中学、高校、大学とずっとバンドをいくつか組んでいた。
ほとんどはコピーで、オリジナルを作ろうとしたこともあったけど作った曲のコードも歌詞も覚えていない。レコーダーのファイルを探せばどこかに残っているのかな。
僕にとってバンドは常にほろ苦さとともにある。もちろん楽しかった思い出でもあるのだけど。
演奏が酷すぎて中学の学園祭のオーディションに落ちたときもあった。
僕はわがままでいつもメンバーと喧嘩した。
むせかえるような部室で少し感電しながら、どれだけ音を大きくできるかだけを考えていた。そしていつも教頭が出てきて怒られた。
メンバーと同じ女の子を好きになって気まずくなったり…(笑)。
大学のサークルでもいつもロクに練習しないで合わせられなかった。
あの時は熱っぽくなっていたし、僕も青かった。
またスタジオに入ったら同じ気持ちになるのかもしれないな。ならないかもしれないけど。
体のどこかに息を潜めていた、あの青臭い気持ちが疼いている。
さあ、スタジオに行こう。