空港からの道

f:id:anthropology-book:20180202074627j:plain

飛行機が空港に降り立つ。

長時間のフライトで鈍った体を抱えながら、心待ちにしていた街に期待は高まる。

しかし、空港の多くは街のはずれにある。

当然、空港は多くのスペースを必要とするからだ。

大体、バスや電車やタクシーで中心部まで向かわなければならない。

僕はその間にある風景が好きだ。

都市の近くでありながらも人びとに持て余された風景がそこにはある*1

 

雑草の生い茂った空き地、スクラップの積み上げられた自動車整備工場、建設途中の線路と瓦礫の山、廃墟のコンクリートに書き殴られたスプレーの文字、ショッピングモールの大型広告…

これらには郊外の「寂しさ」みたいなものが詰まっている。

中心街の持つ華やかさや活気の陰にある風景。

観光客は大きな荷物を抱えて話に夢中になりそんな風景なんか目もくれないかもしれない。

あるいは孤独な旅人は景色を瞳のうえに流れるままにするかもしれない。

僕はそんな風景が好きだ。

ここには確かに人間のうごめく都市の静脈が流れているからだ。

*1:もちろん建設にあたって人びとの営みが押しやられた場合があることは知っている。