雪
朝起きたら雪が積もっていた。
いつものように窓の外を見ると静寂に包まれた白い世界。
朝に積もっているとなると
夜の暗いときから降っていたということなんだろう。
夜の闇に抵抗する真っ白な雪。
世界を覆ってしまおうという二つの力がせめぎ合う。
人びとは何も知らずに眠っている。
* * *
煙草を吸うついでに外を散歩してみる。
雪が降っているとき街はびっくりするほど静かだ。
それは雪の圧倒的な視覚性と街の音を比較するためであろうか。
いや、きっと雪だから人びとは部屋の中で過ごしているのだろう。
ちらほらと見かける外を歩く人も転ばないようにゆっくりと歩いている。
あるいは、雪が音を吸収するのだろうか。
遠くで車の走る音が聞こえる。
雪は世界を覆い尽くす。
今日は雪の勝ちだ。
明日暖かくなってしまったら見るも無残な泥氷となってしまうのだろうか。
誰かが作った雪だるまは笑ったまま手と目を残して消えてしまうのだろうか。
君の力はどこに行った。見せかけのものだったのか。
そんなところも含めて僕は雪が好きだ。