Too beautiful to forget
留学中、同じ寮の同じ階に住んでいたスペイン人の女の子と久しぶりにメッセージのやり取りをした。
彼女はすれ違うといつも「マサ!」と笑いながら挨拶してくれて、たまにキッチンで会うと少しだけ長めに話をした。
彼女はいつも笑って、楽しそうに生きていて、僕はそんな彼女を羨ましいと思っていた。
ある時、大学のプロモーションビデオに出ているのが回ってきた。
「What is happiness for you?」というベタな質問を色んな地域から来た留学生に答えてもらう、というもので他の人は家族、友人などと答えていたのだけど彼女は
「日曜日の朝、少し早く起きて、美味しい朝ごはんを作って、食べて、もう一回寝ること!」
と笑顔で答えていて、僕は少しニヤリとしながらも、やっぱり羨ましく思った。
* * *
毎日のように部屋で飲み会をして、パーティーに出かけていた彼女だが、スペインに帰ってからはほとんど飲んでいないという。
時差でお互い返信が滞りながらも、これまでのこと、これからのこと、メッセージを行き交わす。
「俺は来年、また修士でヨーロッパに行くことにしたよ。また近くになるから会えるといいね!」
―「日本と比べたらよっぽど近くなるね、ハハ。スペインにまたおいでよ!」
彼女たちのいるスペインにはまた行って、一緒に朝まで飲んで踊りたい。
そして彼女は留学中のことを振り返る。
「It was great. Too beautiful to forget.」
忘れるには美しすぎる…。
やっぱり僕は彼女を羨ましいと思った。